ドジャース大谷翔平選手は、ホームランや二刀流のインパクトばかりが注目されがちですが、実は「走塁技術」もMLBトップクラスのクオリティを誇っている選手です。
単純な俊足という意味の「足が速い」だけではなく、
- ベースに対するスライディング角度
- 外野からの送球を避けるライン取り
- カウントや打者・投手の状況を踏まえた“攻めとリスク管理”
といった、いわゆる「野球の足」が一流であることが、スタッツと映像の両面から読み取れるようになっています。
実際、大谷選手はメジャーで複数シーズンにわたり高い盗塁成功率を維持しており、ドジャース移籍後2024年も59盗塁中63企図(成功率93.7%)という“失敗しない走塁”を見せています。
また、Statcastのスプリントスピードではリーグ全体で見れば「超トップスプリンター」ではないものの、それでも平均以上の数値を維持し続けており、その走力に技術と判断力が上乗せされていることが分かります。
- なぜ大谷翔平の走塁は“完璧”と言われるのか
- スライディング角度とライン取りのどこが一流なのか
- 走力だけでなく「野球の足」がチームにもたらす価値
を、データとプレー内容から分かりやすく解説していきます。
ドジャース大谷翔平の走塁技術は本当に「完璧」と言えるのか?

「完璧」という言葉は大げさに聞こえるかもしれませんが、大谷選手の走塁をスタッツから見ると、その表現が決して誇張ではないことが分かります。
盗塁成功率から見える“失敗しない走塁”とは?
ドジャース移籍後の2024年、大谷選手は、シーズン59盗塁で成功率93%台という驚異的な数字を残しています。
- 50盗塁以上のシーズンとしてはメジャー史上でもトップクラスの成功率
- シーズン後半は数十試合に渡って盗塁失敗ゼロという“ノーミス運用”
- 「走る回数」よりも「成功率」「試合へのインパクト」を最大化するスタイル
となっており、単に走りまくるのではなく「ここぞ」という場面を厳選しているのが特徴です。
この“成功率重視”のスタイルは、二刀流として体のリスクを管理する意味でも合理的ですし、ドジャースの打線構成を考えても、
- チャンスで無理な三盗を狙ってアウトになるより
- 確実に得点期待値を上げる場面を見極める
という、非常に“チームファースト”な走塁哲学が感じられます。
スプリントスピードは「超人級」ではなくても“技術で一流”に引き上げている?
Statcastのスプリントスピード(1秒間の最高速度)を見ると、大谷選手はキャリアを通して28ft/s前後を記録しており、MLB全体で見れば上位〜やや上位の水準です。
それでも大谷が“走れる選手”として認知されるのは、
- スタートのタイミング
- 投手・捕手のモーション研究
- 打球判断の早さ
といった技術面で、数値以上の価値を生み出しているからです。
「純粋な短距離走のタイム」ではなく、「野球の中でどれだけ効果的に走れるか」を突き詰めた結果が、盗塁成功率や一塁から一気にホームインする場面の多さに表れています。
なぜ大谷翔平の走塁は「走力」ではなく「野球の足」と呼べるのか?
大谷選手の走塁を見ていると、「速い」よりも「うまい」という表現の方がしっくりきます。ここでは、いわゆる“野球の足”がどこで発揮されているのかを整理します。
リードとスタートの“情報量”が違う?
大谷選手のリードは、一見するとそこまで大きくない場面も多いですが、
- 投手のクイックの癖
- 牽制の頻度
- 捕手のポップタイム
などを試合中に素早くインプットし、「今このカウントなら投手は変化球でカウントを整えたい」「ここはバッテリーが盗塁をケアしにくい場面」という“文脈”まで踏まえてスタートを切っています。
そのため、
- 明らかに走りやすい場面では迷いなくスタート
- リスクが高い場面ではあえて静観
と、試合の流れに合わせた“勝ち筋優先の走塁”ができているのです。
打球判断の速さで「一つ先の塁」を常に狙っている?
ドジャースでのプレーを見ると、大谷選手は
- 一塁走者からの三塁到達
- 二塁走者からのホームイン
といった「一つ先を奪う」走塁が非常に多い選手です。
これは単なる走力ではなく、
- 打球が外野に抜ける瞬間の“スイッチ”の入り方
- 外野手の利き腕・肩の強さの把握
- カウント的に外野がどのくらい前後に守っているか
といった情報を、打球が飛んだ瞬間に総合判断しているからこそのプレーです。
結果として、スコアブックには「二塁打」「三塁打」としか記録されない打球でも、大谷が走ることで得点期待値が一段階上がっているケースが多くなります。
スライディング角度とライン取りはどこが“完璧”と言えるのか?

大谷翔平の走塁を語るうえで欠かせないのが、「スライディング角度」と「ライン取り」の上手さです。ここが、単なる俊足選手と“野球の足が一流の選手”を分けるポイントです。
ベースに対する“斜めの入り方”が絶妙とは?
大谷選手の盗塁やホームインのシーンをスローモーションで見ると、
- ベースに対して真正面から一直線に入るのではなく
- タグを避けるように、やや外側・内側から斜めに入っていく
- 最後の1〜2歩で身体の向きとスライディング角度を微調整している
ことが分かります。
これにより、
- 捕手・内野手がタッグできる“ゾーン”をギリギリまで狭める
- グラブが届くラインから身体や手がスッと外れる
- ベースタッチの瞬間に最短距離だけをきれいに通る
という、いわば「数学的に合理的なスライディング」が完成しています。
“スイムスライド”や手の入れ替えでタグをかわす技術とは?
近年のMLBで流行している“スイムスライド”も、大谷選手は非常に高いレベルで使いこなしています。
- まず片手を先行させてベース方向に伸ばす
- タグが来た瞬間に肩・上半身をひねりつつ逆の手を前に出す
- 同時に下半身はベースラインを外すように滑り込む
といった動作により、ミリ単位でタグをかわすシーンが多く見られます。
これは単なるアクロバットではなく、
- 静止画ではアウトに見えるほどギリギリのタイミングでも
- 実際の接触点は“セーフゾーン”にある
という、非常に実戦的な技術です。
外野からの送球を“ライン取り”で外すのがうまい?
ホームインや三塁到達の場面では、
- ボールが返ってくる予測ラインをあらかじめイメージ
- 送球ラインから半歩ズラした場所を通りながら走る
- 最後の数歩で“スライディングの方向”を送球の逆側へ振る
といった形で、送球と身体が真正面でぶつからないように調整しています。
これにより、
- タグされそうなタイミングでもギリギリでセーフ
- 接触プレーや危険な衝突を避けつつ得点を奪える
という、“安全性と攻撃性を両立した走塁”が実現されています。
ドジャース打線の中で大谷翔平の走塁はどんな価値を生んでいるのか?
長打力+走塁技術で「出塁=得点圏」に近づく?
ドジャースのような強力打線では、単純に出塁するだけでも得点期待値は高いですが、大谷選手の場合は
- シングルヒット → 一塁到達から積極的に二塁・三塁を狙う
- 四球出塁 → 次打者のカウントや守備位置を見ながら盗塁・進塁を狙う
ことで、「出塁=ほぼ得点圏」という状態を自分でつくり出してしまう選手です。
特に、中軸との組み合わせでは、
- 一塁に大谷、打席にフリーマン・スミスといった並びで
- 投手・捕手は配球と盗塁を同時にケアしなければならない
ため、守る側にとっては“常にプレッシャーがかかる打線”になります。
ポストシーズンでこそ「一歩の判断」が勝敗を左右する?
短期決戦のポストシーズンでは、1点の重みがレギュラーシーズンとは比較になりません。その中で、
- 二死一塁からの長打でホームまで還れるか
- 犠牲フライで本当にタッチアップを仕掛けるべきか
- 内野ゴロで一気にホームを狙うかどうか
といった“紙一重の判断”が、シリーズの流れを決めることも少なくありません。
大谷選手は、こうした場面で
- 無謀なチャレンジではなく“勝算のあるチャレンジ”を選ぶ
- ペースを上げるところと、あえて抑えるところのメリハリがある
という、非常に成熟した走塁を見せており、ドジャースにとっては「得点力」と「再現性の高い勝ちパターン」の両方を支える存在になっています。
大谷翔平走塁技術まとめ
大谷翔平選手の走塁は、単なる“快速ランナー”のそれではなく、まさに「野球の足」が一流の選手と言える内容です。
- スプリントスピードはリーグ上位レベルを維持しつつ、盗塁成功率はほぼ“異常値”の高さ
- スライディング角度やライン取り、スイムスライドなど、タグをかわすためのテクニックが完成されている
- 一塁から三塁、二塁からホームを積極的に狙い、出塁をそのまま“高い得点期待値”に変換している
という3点から見ても、「走力だけでなく走塁技術まで完璧に近い選手」と言って良いと思います。
ホームランや投球ばかりがクローズアップされがちですが、大谷翔平選手のハイライトを観るときは、ぜひ“走っているシーン”にも注目してみてください。
ドジャースの得点シーンの裏には、「スライディング角度」と「ライン取り」で稼いだ数多くの“見えない加点”が隠れているはずです。
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よくある質問 / Q&A
Q1. 大谷翔平は純粋なスプリントスピードでもMLBトップクラスなのですか?
A. スプリントスピード単体で見ると、MLB全体の“超トップ”というよりは「平均より明確に上の優秀なランナー」という位置づけです。それでも盗塁成功率や進塁能力が異常に高いのは、スタート、打球判断、スライディング技術といった“野球の足”が一流だからです。
Q2. ドジャースに移籍してからも走塁の積極性は変わっていないのですか?
A. むしろドジャース移籍後は、強力打線の中で「ここで1つ前の塁を奪えば、一気に試合が動く」という場面を見極めながら走っており、成功率も非常に高くなっています。59盗塁中63企図という数字は、積極性とリスク管理の両立を示す代表的なスタッツです。
Q3. スライディング角度やスイムスライドは誰でも真似できる技術ですか?
A. フォーム自体は動画を見れば真似できますが、大谷選手のように「送球の軌道」「タッグのタイミング」「ベースとの距離」を同時にコントロールするレベルまで落とし込むには、かなりの練習と経験が必要です。まずは安全な環境で基本のヘッドスライディングを固め、そのうえで徐々に“角度”や“手の出し方”のバリエーションを増やしていくのがおすすめです。
Q4. 今後、年齢を重ねても大谷翔平の走塁は武器であり続けるでしょうか?
A. スプリントスピードは年齢とともに少しずつ落ちていく可能性がありますが、走塁技術や状況判断は経験を積むほど磨かれていきます。大谷選手の場合は「量より質」の走塁スタイルにすでにシフトしつつあるため、今後も“ここぞで決める走塁”という形で長く武器になっていくと考えられます。

