ドジャース大谷翔平選手は、「ルーティンの鬼」と言われるほど準備の流れを徹底して守る選手です。
その中でも象徴的なのが、「基本的にフィールドでのバッティング練習(ケージ外BP)をしない」という独特のスタイルです。
ふだんは屋内ケージで淡々と微調整を繰り返し、試合前に大きく見せるルーティンはほとんどありません。
ところが2025年ポストシーズン、NLCSやワールドシリーズ前の大一番で、大谷選手は自らその“絶対に崩さないはずのルーティン”を破り、フィールドでの打撃練習に姿を現しました。
スタンド最上段や屋根付近まで届く打球を連発し、その直後に3本塁打&10奪三振という“伝説級のパフォーマンス”でNLCS MVPを獲得したことが報じられています。
- 大谷翔平の“普段のルーティン”と、その例外が生まれた背景
- ルーティンをあえて崩すことのスポーツ科学的・メンタル的な意味
- 「調子が悪い時に何を変え、何を絶対に変えないか」という大谷流ルーティン再設計術
をわかりやすく解説していきます。
大谷翔平の“絶対に崩さないルーティン”とは?フィールドで打撃練習をしない理由は?

大谷翔平選手の打撃ルーティンでよく語られるのが、「試合前にフィールドで打たない」という独特のこだわりです。
通常、多くの主力打者は試合前にフィールドに出て、フリー打撃でスタンドに次々と打球を飛ばしながら感覚を整えます。
しかし大谷選手は、屋内ケージでのティー打撃やフリップ、マシン打撃を中心に“見せない準備”で仕上げるスタイルを続けてきました。
このルーティンには、いくつかの合理的な理由があります。
- 疲労管理の観点
二刀流として投打両方をこなす中で、余計なスイング数を減らし、試合本番にエネルギーを残す必要があるためです。特に投げる試合前は、フィールドで派手に打つよりも、ケージでミニマムな調整に留める方が負担が少ないと考えられます。 - 再現性の高い環境で微調整したい
屋内ケージは、風の影響もなく、距離や高さも常に一定です。毎日同じ環境で同じルーティンをこなすことで、スイングやタイミングの「ずれ」を感知しやすくなります。 - “見せない準備”によるメンタルメリット
観客やメディアの視線から離れた場所で、自分だけの世界に入り、淡々と準備することで、精神的なノイズを減らしやすくなります。
こうした理由から、大谷選手は長年「ケージで完結するルーティン」を貫いてきました。だからこそ、ポストシーズンでフィールドに姿を現したこと自体がニュースになったのです。
ポストシーズン前に何が起きたのか?NLCSとワールドシリーズでの“例外ルーティン”とは?
2025年ポストシーズンに入ってから、大谷選手は打撃面で不振に陥っていました。
NLDSやNLCS序盤で、打率1割台・長打も少ない状態が続き、「二刀流の負担が打撃に影響しているのでは?」という声も出始めていました。
そこで注目されたのが、NLCS第3戦前の“異例の”フィールド打撃練習です。報道によると、
- ドジャースタジアムでのワークアウト中、
ふだんはケージにこもる大谷選手がフィールドに姿を現す - 5ラウンドほどのフリー打撃で、
スタンド最上段やライトスタンドの屋根付近に直撃するような特大弾を連発 - ベンチの仲間たちも打球が飛ぶたびにどよめき、
球場全体の空気が一気に“お祭りモード”になった
と伝えられています。
そして、その「ルーティン変更」の直後の試合で起きたのが、
- 3本塁打
- 10奪三振
- チームをワールドシリーズ進出に導く歴史的パフォーマンスとNLCS MVP獲得
という、まさに“漫画のような一日”でした。7
もちろん、ルーティンを変えたから100%結果が出た、と単純には言い切れません。ですが、
「フィールドでしかできないことがあるから、残り試合が少ない今こそ試したかった」
と本人が語り、具体的な狙いについては「それは秘密です」と笑いながら伏せたというエピソードは、ファンの想像力をかき立てました。
なぜ大谷翔平は“ルーティンを壊すタイミング”を選んだのか?スポーツ科学で読み解ける理由は?
では、大谷選手はなぜ「ポストシーズンの大一番」という、もっともプレッシャーの大きい場面であえてルーティンを壊したのでしょうか。
ここには、スポーツ科学的にも納得感のあるポイントがいくつかあります。
- 同じ刺激だけでは「慣れ」が起こるから
人間の身体も脳も、同じ刺激が続くとそれに適応し、「新鮮さ」が薄れていきます。
いつも同じケージ、同じ距離、同じ視界だけで打っていると、良くも悪くも慣れすぎてしまい、微妙なズレに気づきにくくなることがあります。 - 環境を変えることで“脳のスイッチ”を入れ直せるから
フィールドでの打撃は、
- 広い視界
- 観客席やフェンスの距離感
- 打球音の響き方
など、ケージとはまったく違う情報が大量に入ってきます。
こうした新しい刺激は、脳にとって「環境が変わった」という強いサインになり、注意力や集中力の再起動につながりやすいとされています。
- “本番と同じ文脈”で動きを確認できるから
スポーツ科学では、「コンテキスト依存性(文脈依存)」がよく語られます。本番と近い環境で練習すると、その動きが試合でも再現されやすい、という考え方です。
大谷選手が「フィールドでしかできないこと」として意識していたのは、まさに本番の軌道・風・スタジアムの空気の中での打球感覚だったと考えられます。 - 残り試合が少ないからこそ“打席の質”を一気に上げたかった
ポストシーズンは、試合数が限られています。調子が戻るまで何週間も待つ余裕はありません。
だからこそ大谷選手は、「今までのまま」ではなく、あえてルーティンを崩してでも一気に状態を引き上げにいくスイッチを探したとも解釈できます。
打球の軌道と観客席の「視覚情報」が脳のスイッチを入れる?フィールド打撃の意味とは?
ケージ打撃とフィールド打撃の決定的な違いは、「打球の行き先が見えるかどうか」です。
- ケージ
- ネットにすぐ当たるので、打球の“最終地点”までは見えない
- 代わりに「芯で捉えた感触」「角度」「打ち出し方向」の手応えに集中しやすい
- フィールド
- 打球がどこまで伸びるか、スタンド・フェンス・屋根など“景色の中で距離を感じられる”
- 本番のスタジアムと同じ風・空気感の中で軌道を確認できる
大谷選手がポストシーズンで屋根付近やスタンド最上部に届く打球を連発したのは、単にパワー誇示ではなく、
- 「このスイングなら、この角度と打球速度で、この球場ならここまで飛ぶ」
という視覚と感覚のリンクを再キャリブレーションしていた可能性があります。
これはゴルフでいうところの「本番コースでの練習ラウンド」に近く、距離感の再調整としての意味合いが非常に大きいと考えられます。
調子が悪いときに何を変え、何を変えないのか?大谷流“ルーティン再設計術”とは?

ここで重要なのは、大谷選手は「すべてのルーティンを壊した」のではなく、「変える部分」と「絶対に変えない部分」を明確に分けていたという点です。
1. 変えたのは「環境」と「刺激の入れ方」
- ケージ中心 → 一部をフィールド打撃に変更
- 視界・音・距離感といった“外側の情報”をあえて変化させる
これは、同じフォーム・同じ考え方を保ったまま、入力される情報だけを変えて脳を覚醒させるアプローチと言えます。
2. 変えなかったのは「自分の軸となる原則」
一方で、大谷選手がインタビューなどで繰り返し語ってきたのは、
- 「自分でコントロールできることに集中する」
- 「目標よりも、目標に向かう“取り組み方”の質を大事にする」
といった、思考の軸そのものは変えない姿勢です。
今回の“ルーティン変更”も、
- 焦ってフォームを大きくいじる
- 打席で全く別のことをやろうとする
といった「場当たり的な変化」ではなく、
「打席の質を上げるために、必要な刺激だけを足す」
という“軸を守ったままの微調整”だったと考えられます。
3. 大谷流ルーティン再設計の3つのポイント
大谷翔平選手の今回の選択から学べる「ルーティン再設計術」を、3つに整理すると次のようになります。
- ルーティンを“守る部分”と“いじってよい部分”に分ける
- 例:睡眠時間・ウォームアップの順番など「土台」は固定
- 例:場所・BGM・練習メニューの一部など「環境」は状況に応じて変える
- 調子が悪いときこそ、フォームではなく“文脈”から見直す
- いきなり動きを大きく変えるのではなく、
- 練習場所
- 一緒にやる人
- 時間帯
など、“外側”から変えていくことで、崩壊リスクを下げることができます。
- 残り時間・試行回数から逆算して「勝負の一手」を打つ
- シーズン中盤なら「時間をかけて少しずつ修正」
- ポストシーズンのように残り試合が少ないなら、一度きりの大きな刺激を入れてブレイクスルーを狙う
今回の大谷選手のフィールド打撃は、まさにこの「勝負の一手」だったと言えるでしょう。
日常にどう応用できる?ビジネスパーソンが真似したい大谷翔平ルーティン3ステップとは?
大谷選手のルーティン戦略は、ビジネスや勉強にもそのまま応用できます。
ステップ1:自分の“絶対に守るルーティン”を書き出す
- 起きる時間
- 睡眠時間
- 仕事・勉強前のウォームアップ(軽い運動・コーヒー・深呼吸など)
など、「ここが崩れると一気に調子が悪くなる」という土台ルーティンを3〜5個に絞って書き出します。
ステップ2:あえて“環境だけ”を変えてみる
調子が落ちてきたと感じたら、いきなりやり方を変えるのではなく、
- 場所を変える(カフェ・図書館・会議室など)
- 時間帯を変える(朝型に寄せる・集中タイムを固定する)
- 音環境を変える(BGM・ノイズキャンセリングの有無)
といった外側の文脈から変えていくのがポイントです。
大谷選手にとっての「フィールド打撃」は、あなたにとっての「いつもと違う場所での作業」に近いイメージです。
ステップ3:“一撃でスイッチが入る儀式”を用意する
- 新しいノートを開く
- 勝負プレゼンの日だけ着るジャケットを決めておく
- 朝一番で「今日やる3つのこと」を紙に書いてからPCを開く
など、「これをやると本番モードになる」という“スイッチルーティン”を作っておくと、ここぞという時に集中力を一気に高めやすくなります。
大谷選手にとって、ポストシーズンのフィールド打撃は、この“スイッチルーティンの強化版”だったのかもしれません。
大谷翔平ポストシーズンでルーティンを壊したのかまとめ
大谷翔平選手は、普段は屋内ケージでのミニマルな打撃調整に徹する「ルーティンの鬼」です。
ところが2025年のポストシーズン、打撃不振と残り試合の少なさを前に、あえて自分のルーティンを部分的に壊し、フィールドでの派手なバッティング練習に踏み切りました。
その結果として生まれたのが、3本塁打&10奪三振という歴史的ゲームとNLCS MVP。それは偶然だけではなく、
- 同じ刺激に慣れすぎないように、あえて環境を変えること
- フォームではなく「文脈」を変えて打席の質を高めること
- 守るべきルーティンと変えてよいルーティンを、はっきり分けておくこと
といった、極めて合理的で再現性の高い「ルーティン再設計術」の結果でもあったと言えます。
私たちの日常でも、
- 調子が悪いときに、すべてをリセットしてしまうのではなく、
- 守るものと変えるものを意図的に選び分ける
という考え方を持つだけで、仕事や勉強のパフォーマンスは大きく変わってきます。
「ルーティンの鬼だからこそ、あえて壊すタイミングを知っている」
それが、ポストシーズンで輝きを取り戻した大谷翔平選手から学べる、いちばん大きなメッセージかもしれません。
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よくある質問|Q&A
Q1. 大谷翔平は本当に普段フィールドで打撃練習をしていないのですか?
A1. はい、一般的には「試合前にフィールドでフリー打撃をすることはほとんどない」とされています。ふだんは屋内ケージでの打撃が中心で、ポストシーズンでのフィールド打撃は“例外的なルーティン変更”として報じられています。
Q2. ポストシーズンでルーティンを壊すことにリスクはなかったのでしょうか?
A2. もちろん、ルーティンを大きく変えることはリスクもあります。ただし、大谷選手が変えたのは「環境(フィールドかケージか)」であり、スイングの考え方や準備の軸は維持していました。軸は守りつつ、刺激だけ変えるというやり方だったため、リスクを抑えた“攻めの変更”だったと考えられます。
Q3. 一般の人が真似するとしたら、どの部分がポイントになりますか?
A3. ポイントは次の3つです。
1) 睡眠・起床時間など「絶対に守るルーティン」をまず決める
2) 調子が悪くなったら、内容ではなく「場所・時間帯・音環境」といった文脈を変えてみる
3) ここぞという日のための“スイッチルーティン”(服・小物・儀式)を用意する
この3つを意識するだけでも、大谷選手のように「守るルーティン」と「あえて壊すルーティン」を上手く使い分けられるようになります。
Q4. 大谷翔平の“秘密の理由”は何だったと思いますか?
A4. 本人は詳細を「秘密」としていますが、スポーツ科学的に考えると、
- スタジアムごとの打球の伸び方を本番環境で確認したかった
- 自分だけでなくチーム全体のムードを変えたかった
- 大舞台に向けて「自分は準備できている」と強く実感するための儀式にしたかった
といった要素が組み合わさっていた可能性があります。いずれにせよ、「ただの気分転換」ではなく、緻密に考え抜かれたルーティン再設計だったことは間違いないでしょう。

