大谷翔平選手の花巻東時代を象徴する発想として語られるのが、練習の最後に“わざと遅らせたスイング”で締めるという考え方です。
これは「うまく打てた日を伸ばす」ための練習ではありません。実戦で必ず起きる“遅れ”に先回りし、崩れない軌道だけを残すための確認作業です。
速く振れる日は誰でも形が整いやすいです。差が出るのは、緊張・配球・風・疲労などで一拍遅れた瞬間に、フォームが崩れるかどうかです。
大谷選手が最後に条件を悪くしていたとすれば、それは上振れ狙いではなく、下振れの底を先に引き上げる「設計」だったと捉えられます。
なぜ「遅らせる」ことが最優先になるのですか?

試合で一番起きやすい最悪ケースは「遅れ」です。速さは当日の状態で出ることがありますが、遅れたときのバット軌道は偶然では作れません。
だからこそ、意図的に遅らせた一振りで“崩れ方”を見ます。再現性は「ナイススイング」よりも「ミスの形」に出やすいからです。
さらに近年の花巻東は、可動域の数値管理や水泳トレーニングなど、身体を動かす土台づくりも重視していると言われています。
土台があるほど、遅れた瞬間でも体幹が残り、軌道が崩れにくくなります。
その一振りで何をチェックしていたのですか?
“締めの遅らせスイング”が確認の時間だとすると、見ているのは打球結果そのものではなく、次のような項目です。
始動→インパクトの「時間幅」が保てていますか?
遅れても、始動がバタつかず、インパクトまでの所要時間が極端に伸びないかを見ます。ここが崩れると、日替わりの状態に飲まれます。
ヘッドが内から出続けていますか?
遅れたときほど、外回りの“届かせる”動きが出やすいです。内から出せるなら、遅れの中でも最短で当てられます。
体幹が残り、前脚で止まれていますか?
遅れた瞬間に前に突っ込むと、詰まりが内野ゴロになりやすいです。止まれていれば、詰まってもファウルで逃げられます。
当たりが弱くても「音と角度」が大きくブレませんか?
飛距離よりも、打球の質のバラつきを見ます。弱くても角度が残るなら、最低点が上がっています。
実際にどうやって「締めの一振り」を作るのですか?

ポイントは「遅らせる」ことと「速さで誤魔化さない」ことです。やり方はシンプルで、次の順で再現できます。
ティー打撃かフロントトスで、開始を0.1秒遅らせますか?
合図から“待つ”意識を入れます。早く始動して合わせにいくのではなく、遅れた状態からでも軌道が保てるかを見ます。
出力は7〜8割で振れていますか?
フルパワーは状態が良い日に助けになりますが、確認には向きません。7〜8割で「形だけで当てる」条件にします。
インパクト後の形を止めて確認できますか?
振り切って終わりではなく、止めてチェックします。肩線・骨盤線・ヘッド位置が崩れていないかを見ます。
本数は1〜3本で切れていますか?
締めは追い込みではなく“確認”です。疲労が増える前に終えることで、崩れの原因を「疲れ」に逃がさず、純粋にフォームの問題として見えます。
この練習がなぜ「最低点」を上げるのですか?
遅れたときに崩れない軌道が残ると、実戦で起きる現象が変わります。
- 詰まりが内野ゴロではなく、ファウルで済みやすくなります
- 逆方向への強い打球が残りやすくなります
- 当日の状態がズレても、結果が極端に落ちにくくなります
- 「遅れても当たる」という安心感が、配球判断を早くします
そして花巻東が近年も“強く振る”ことを軸にしつつ、軸づくりや身体の土台づくりを重視している流れと合わせて見ると、この発想は一貫しています。
強いスイングは偶然でも出ますが、崩れないスイングは土台と設計でしか作れません。
※大谷翔平選手やドジャースの最新情報発信!ショウタイムズ【公式】はコチラ
大谷翔平花巻東遅らせたスイングまとめ
「練習の締めは“わざと遅らせたスイング”」という発想の正体は、飛距離や派手な成功を増やすためではありません。
試合で必ず起きる“最悪条件=遅れ”を先に体験し、その中でも崩れない軌道だけを残すための締めです。
速さは日によって変わります。状態も相手も毎回違います。
それでも結果を安定させるには、遅れた瞬間に崩れない形を先に作っておくことが重要です。
高校時代からその確認を練習の最後に置いていたと考えると、大谷翔平選手の強さが「上振れ」ではなく「下振れの設計」にあることが、よりはっきり見えてきます。

