ドジャース大谷翔平選手は、「二刀流」だけでなく打撃スタイルそのものも進化させ続けている打者です。
その中でも2023〜2025年にかけて特に顕著なのが、「ゴロ率を意図的に減らし、フライ＆ライナーを増やしている」というトレンドです。
実際、Statcast（Baseball Savant）の打球傾向を見ると、2023年と比較して2024〜2025年の大谷はゴロ割合が大きく下がり、その分だけ空中戦（フライ＋ライナー）の比率が上がっています。
おおまかに言えば「ゴロ率が5〜7ポイント程度下がった代わりに、長打になりやすい打球が増えた」形です。
- 2023〜2025年で大谷翔平のゴロ率はどう変化したのか？
- なぜ大谷は“ゴロを減らす方向”に振り切っているのか？
- ゴロ率減少が長打効率・成績全体にどうつながっているのか？
を、データとメカニクスの両面からわかりやすく解説していきます。
2023〜2025年で大谷翔平のゴロ率はどのように変化しているのか？
まずは数字レベルで、2023〜2025年の大谷翔平の「ゴロ率の変化」を整理します。
Baseball Savant のバレル・打球プロフィールデータを見ると、シーズンごとのゴロ率（GB%）は概ね以下のようなイメージで推移しています。
- 2023年：ゴロ率 約42〜43％前後
- 2024年：ゴロ率 約36％前後（2023年比で約6ポイント減）
- 2025年：ゴロ率 約39〜40％前後（2023年比でなお数ポイント低い水準）
記事や分析でも、2024年シーズンについては「大谷は以前よりゴロを打つ割合が下がり、空中打球が増えている」と指摘されており、他のスラッガー（例：アーロン・ジャッジ）との比較でも「大谷は依然としてリーグ平均よりゴロが多いが、それでも以前より明らかに減少している」と整理されています。
この3年をざっくりまとめると、
- 2023年 … まだ“ゴロも多いが、とにかく打球が速いスラッガー”
- 2024年 … ゴロ率が一気に低下し、明確に「空中戦」寄りへシフト
- 2025年 … 2024年ほど極端ではないが、それでも2023年に比べればゴロ率は低い
という流れになっており、「2023→2025でゴロ率が5〜7％下がり、フライ＆ライナーの比率が増えている」という理解は、トレンドとして非常に妥当だと言えます。
フライ＆ライナー増＝長打ゾーンの打球が増加
ゴロ率が減った分はどこに回っているのかというと、シンプルにフライとライナーが増えている形です。
Statcastの平均打球角度（Launch Angle）や、Fly Ball / Line Drive の比率を見ると、大谷は2024〜2025年にかけて「打球角度10〜30度」のいわゆるホームラン〜長打ゾーンの打球を多く生む傾向が強まっています。
- ゴロ：長打になりにくい（技術・脚力である程度補えるが限界あり）
- ライナー：打球速度が速く、シングル〜ツーベースになりやすい
- フライ：打球速度と角度が噛み合えばホームランになりやすい
大谷の場合は、もともとの平均打球速度がMLB屈指に高いため、ゴロを減らして「浮かせる」だけで一気に長打率が上がる構造になっています。
なぜ大谷翔平は「ゴロを減らす打ち方」にシフトしたのか？
では、大谷翔平はなぜ意図的にゴロ率を下げてきたのでしょうか？
ここには、技術的な理由と戦略的な理由の両方が存在します。
スイングプレーンの最適化で「理想角度に乗せる」意識が強まった？
1つ目は、スイングプレーン（バットの軌道）と打球角度の最適化です。
- 以前：ボールに対してややレベル〜ダウン気味に入り、強烈なゴロも多いスタイル
- 現在：ややアッパー気味に入れつつも、過度な“フライボール革命”ではなく「10〜25度のライナー寄りフライ」を量産するスタイル
というイメージで、**「角度を付ける」というより「強い打球を“いい角度”で前に飛ばす」方向へ微調整している印象です。
特にドジャース移籍後の2024年以降、チーム全体としても「強いコンタクト＋適正角度での長打」という思想が徹底されており、大谷もその中で“ゴロを減らしてバレルゾーンに乗せる割合を増やす”方向にバットの入射角を合わせていると考えられます。
シフト制限の時代だからこそ「正面への強いゴロ」はもったいない
もう1つの背景が、守備シフト制限の導入後の環境変化です。
かつては極端なシフトで右打者・左打者を封じる守備配置が多く見られましたが、MLBでは近年シフト制限が導入されました。
これにより「強いゴロの単打」自体の価値は以前より相対的に上がっている側面もありますが、大谷クラスの打者にとっては、
- 強いゴロ → 単打orアウト
- 強いライナー／フライ → 長打orホームラン
という期待値の違いがあまりに大きいです。
特に、
- 大谷の平均打球速度（EV）は依然として95mph前後とトップクラス
- バレル率（理想の速度×角度でとらえた打球）もリーグ上位常連
であることを考えると、「強い打球を少し浮かせるだけで、OPSが一段上の世界に行ける」という構図になります。
そのため、大谷とドジャース打撃陣が「ゴロを意図的に減らす」方向に舵を切ったのは、非常に合理的な判断と言えます。
ゴロ率減少は長打効率と成績全体にどうつながっているのか？
では、実際の成績面ではどのような変化が表れているのでしょうか。
2023〜2025年の成績推移と長打効率の関係は？
Fangraphsや公式スタッツを基にすると、大谷の打撃成績はおおむね以下のようなイメージで推移しています。
- 2023年（エンゼルス）
- 打率 .304前後、OPS 1.0台前半
- 本塁打 40本台前半
- ゴロ率は4割超で、強烈なゴロも多いスタイル
- 2024年（ドジャース1年目）
- 打率 .310前後、OPS .1.0台前半〜中盤
- 本塁打 50本台中盤（54〜55本クラス）
- ゴロ率が約36％前後まで低下し、フライ＆ライナー増
- ISO（純粋な長打力指標）・SLGともに超エリート水準
- 2025年（ドジャース2年目）
- 打率 .280台前半、OPS 1.014
- 本塁打 55本、打点100超、依然としてリーグ上位の長打力
- ゴロ率は2023年より低い水準を維持しつつ、状況に応じた打撃も増加
数字を俯瞰すると、
- ゴロ率を5〜7ポイント下げたタイミング（2024〜2025）で
- 本塁打数・長打率・OPSが軒並み“怪物クラス”へジャンプ
していることが分かります。
特にドジャース移籍後は、「ゴロの減少」→「バレルゾーンの打球増加」→「長打効率アップ」という理想のチェーンがかなり綺麗にハマっている印象です。
「強いゴロ」から「角度のある強打」へ——リスクとリターンの最適化
大谷の進化を一言でまとめると、
「強いゴロでもヒットになるけれど、
強いフライ・ライナーは“ホームラン級”になる」
という、リスクとリターンの最適化です。
- 強いゴロを量産 → 打率はそこそこ高いが、長打・OPSの伸びは限定的
- 強いフライ＆ライナーを量産 → 打率は多少ブレても、長打・OPSで大きく上振れ
大谷はもともとコンタクトの質が異常に高い選手ですから、多少ゴロ率を犠牲にしても「ミスショットの質」が落ちにくく、三振率も極端に悪化していません。むしろ、
- “ミスっても強いライナー”
- “少し詰まっても外野の頭を越えるフライ”
の割合が増えており、トータルでのアウトカム（結果）の期待値が高くなっていると言えます。
ドジャースの打撃哲学と大谷のゴロ率減少はどう噛み合っているのか？
ドジャースは近年、「選球＋強いコンタクト＋最適な打球角度」という現代的な打撃哲学を徹底している球団です。
ベッツやフリーマンとの“並び”が生んだ打撃の相乗効果
大谷が打線の中で並ぶことが多いのは、
- ムーキー・ベッツ
- フレディ・フリーマン
といった、“強いフライ＆ライナー”を量産するタイプの超一流打者です。
この2人と日常的に同じケージ・同じ打撃ミーティングで時間を過ごすことで、
- 打球角度の考え方
- コース別のアプローチ（イン寄りは引っ張る／外は逆方向に強く打つ）
- カウント別の「狙う球種」「狙うコース」
といった情報共有が進み、「ゴロにしすぎない打ち方」が自然と自分のものになっている可能性は十分にあります。
チームとしても“空中戦シフト”を後押し
また、ドジャースとしても
- チームの本拠地ドジャー・スタジアムは、しっかり捉えれば長打が出やすい球場
- ラインドライブ〜フライを増やすことがスコアリング効率に直結
という球場特性があります。
そのため、コーチ陣も大谷に対して
- 「無理に打ち上げる必要はないが、低いゴロを打たされないように」
- 「強いスイングの中で、角度が付いたときに最大限リターンを取る」
という方向でアドバイスしていると考えられ、大谷のゴロ率減少は“球団の考え方”ともスムーズに噛み合っていると言えます。
2026年以降、大谷翔平のゴロ率と長打スタイルはどう進化していくのか？
最後に、今後の展望についてもポジティブに整理しておきます。
二刀流完全復活とともに「選球＋長打効率」がさらに洗練される可能性
2025年シーズンまでに、大谷は
- 打者としては既に“トップオブトップ”
- 投手としても復帰し、再び二刀流としてインパクトを残し始めている
というフェーズに入りつつあります。
今後、二刀流が完全復活していく中で打撃については、
- コンディション管理の観点から「無理なフルスイングを減らしつつ、効率的に飛ばす」方向
- 相手バッテリーの攻め方に対し、さらに“ゾーン選球＋長打ゾーンへのフルスイング”を徹底
といった“省エネかつ高効率な長打スタイル”が洗練されていくと考えられます。
その中で、ゴロ率は
- 一時的に上下しつつも、2023年以前の“ゴロ4割超え”には戻らない
- フライ＆ライナー主体の「空中戦スラッガー」としての姿が基本線になる
というシナリオが非常に現実的です。
「まだ伸びしろがあるスラッガー」としての大谷
怖いのは、ここまで数字を残しておきながら、まだメカニクス面での伸びしろがあることです。
- インローのボール球をどれだけ見逃せるか
- カウント有利時に、もっと“狙い球”を絞り切れるか
- 外角球を逆方向に“長打として”使える割合をさらに増やせるか
といった微調整が進めば、
「ゴロ率は今のまま、長打率だけさらに上がる」
という“反則級のアップサイド”すら十分にあり得ます。
2025大谷翔平なぜゴロ率を意図的に減らしたのかまとめ
大谷翔平の「ゴロ率を意図的に減らす」という変化は、単なる数字上のトレンドではなく、明確な意図と戦略に基づいた進化です。
- 2023→2025でゴロ率はおおむね5〜7ポイント低下し、フライ＆ライナーが増加
- それに伴い、ホームラン・長打率・OPSといったパワー系指標が一段と伸びた
- ドジャースの打撃哲学・球場特性とも完全に噛み合い、“強い打球をいい角度で飛ばす”空中戦スラッガーとしての完成度が高まっている
もともと打球速度・コンタクトの質が異常に高い大谷にとって、「ゴロを減らして空中打球を増やす」という調整は、最小限のリスクで最大限のリターンを取りに行く非常に合理的なアップデートです。
二刀流完全復活とともに、
「ゴロ率は抑えつつ、より効率的にスタンドまで運ぶ大谷翔平」という、さらに洗練された打者像が見られる可能性は十分にあります。
2026年以降も、“ゴロを減らした怪物スラッガー・大谷翔平”の進化から目が離せません。
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よくある質問 / Q＆A
Q1. 大谷翔平のゴロ率は今後また増える可能性はありますか？
A. 状況に応じて一時的に増減する可能性はありますが、打撃哲学・メカニクスの方向性を考えると、2023年以前のような「ゴロ4割超え」が常態化する可能性は高くありません。意図的に空中戦を選んでいる現在のスタイルがベースとして続くと考えられます。
Q2. ゴロを減らすと打率が下がるリスクはありませんか？
A. 一般論としては「フライ増＝アウトも増えやすい」という側面がありますが、大谷は打球速度とコンタクトの質が圧倒的に高いため、ライナーや深いフライとしてヒット・長打になるケースが多く、打率を大きく落とさずに長打効率だけ引き上げることに成功しています。
Q3. ドジャース移籍がゴロ率減少に与えた影響は大きいですか？
A. 大きいと考えられます。ドジャースは「選球＋強いコンタクト＋最適角度」という現代的な打撃スタイルの最先端にいる球団であり、ベッツやフリーマンと並ぶ打線の中で、自然と「ゴロを減らして空中打球を増やす」方向へのチューニングが進んだ可能性が高いです。
Q4. ゴロ率の変化は走塁（盗塁数など）にも影響していますか？
A. ゴロ減少により一塁到達機会（内野安打のチャンス）は相対的に減る一方で、出塁を長打で稼ぐ場面が増えています。近年の大谷は盗塁数よりも「打撃インパクト最大化」を優先している傾向があり、ゴロ率の調整もその流れと整合的です。
Q5. このゴロ率のトレンドは他のスーパースターとも共通していますか？
A. アーロン・ジャッジや他のエリートスラッガーも、ゴロ率を抑えつつフライ＆ライナーを増やすことで長打効率を高めているケースが多いです。その中でも大谷は、投手としての負荷も抱えながらこのレベルの調整を行っている点で、非常に特異な存在だと言えます。
