ドジャース大谷翔平選手のプレーを見ていると、「同じ人間なのか?」と思うような打球音や走塁スピード、そして投球のキレを目にすることが多いです。
その裏側には、単なる筋力の強さではなく、運動科学的に見ても“MLB史上規格外”と言える身体能力の構造があります。
- どこが“異次元”なのか?
- なぜ110mph超えの打球とハイレベルなスプリントを両立できるのか?
- 投打に共通する「地面反力」の使い方とは何か?
を、運動科学・バイオメカニクスの視点から肯定的に解説していきます。
大谷翔平の身体能力はどこが「異次元」なのか?

大谷翔平の身体能力が“規格外”と言われる理由は、単に「体が大きくて筋肉質だから」ではありません。
ポイントは、次の3つの要素が同時にトップレベルで成立していることです。
- 下半身出力とスプリント能力がエリートレベル
Statcastのデータでは、大谷翔平の平均スプリントスピードはおよそ28ft/s前後とされ、MLB全体でも上位クラスに位置する水準です。 - 打球速度(Exit Velocity)がMLBトップクラス
平均打球速度は95mph前後、最大打球速度は119mphを超えるシーズンもあり、長年にわたって“最も強い打球を打つ打者”の一人としてランキングされています。 - 投手としても100マイル近い速球を投げられる上半身・体幹出力
打者専任でも成立する打撃指標に加え、投手としても平均150km/h台後半〜160km/h近い速球を投げられる身体設計は、MLBの長い歴史の中でも極めて稀な構造です。
多くの選手は「パワー型で足はそこそこ」「スピード型でパワーはほどほど」と、どこかに振り切ることが多いですが、大谷の場合はパワーとスピードを同時にMAXに近づけている点が、まさに“異次元の身体能力”と言えるポイントです。
垂直跳び・下半身出力はなぜメジャートップクラスと言えるのか?
大谷翔平の垂直跳びの具体的な数値は公表されていませんが、トレーニング映像やスプリント指標、打球・投球のデータから、下半身の爆発的出力がメジャートップクラスであることはほぼ確実です。
垂直跳び=地面反力の“瞬間最大出力”の指標?
垂直跳びは、運動科学では下半身の瞬発的な地面反力(GRF:Ground Reaction Force)の指標としてよく使われます。
地面を強く・速く押せる選手ほどジャンプは高くなり、その力は野球では
- 力強いスタートダッシュ
- 一歩目のスピード
- 踏み込み時のブレーキ&加速力
などに直結します。
研究レベルでも、「地面反力のピーク値が高い選手ほどボールスピードや走スピードが高くなる」というデータが多数報告されており、投球速度とも強く関連することが示されています。
大谷のように
- 190cmを超える体格
- 爆発的なスタートと長いストライド
- 走塁で見せるスムーズな加速と減速
を兼ね備えている選手は、“大柄なのに軽やかに動ける”=地面反力を効率的に引き出せるエリートアスリートと言えます。
体幹の剛性はなぜ「回転軸のブレ」を極小にできるのか?

「剛い体幹」と「しなやかな四肢」が両立している?
大谷翔平のスイングや投球フォームを見ると、共通しているのは
- 軸足から骨盤→体幹にかけて太く一本の軸が通っているように見える
- その上で、腕やバットはしなやかに後からついてくる
という動き方です。
ここで鍵になるのが体幹の「剛性」と「抗回旋力」です。
- 剛性:
回転中に軸がグニャっと折れない“固さ”。
これが高いほど、骨盤〜胸郭〜頭部のラインが真っすぐ保たれます。 - 抗回旋力:
「回されまい」とする力に耐える能力。
下半身が先に回っても、上半身を一瞬だけ“我慢”させることで、最後に一気にエネルギーを解放できます。
大谷は、骨盤と胸郭(胸まわり)の相対的なねじれを大きく使いながらも、頭の位置や背骨の角度がほとんどブレないのが特徴です。
その結果、
- フルスイングでもボールコンタクトの再現性が高い
- 160km/h級の投球でもリリースポイントが安定する
という「ブレないのに速い」回転動作が成立しているのです。
110mph超えEVを生む股関節内旋角度の深さとは?
なぜ大谷は“踏み込み足”の粘りが異常に長いのか?
大谷翔平の打撃・投球をスローで見ると、前足(踏み込み側)の股関節が深く内旋し、粘るように地面を捉えているのが分かります。
この「股関節内旋角度の深さ」は、次のようなメリットを生みます。
- 骨盤の回転軸が“深い場所”に設定され、回転半径が大きくなる
- 地面反力の方向が、より効率よく回転方向へ向かいやすくなる
- 上半身の回転を一瞬“待ってから”解放できるため、エネルギーが溜まる時間が長くなる
結果として、「踏み込み→圧縮→解放」の三段階が最大限に活き、110mphを軽く超える打球速度が生まれます。
2024年には、119.2mphという自身最速かつシーズン最速クラスの打球を記録しており、“MLB全体でもトップ数名”に入る打球速度を連発しています。
回転スピードはなぜ速い?体幹の“抗回旋力”と足裏のグリップ力とは?

「我慢できる体」と「滑らない足」が回転スピードを決める?
回転スピードというと、「筋力が強いから速い」と思いがちですが、運動科学的には
- どれだけ長くエネルギーを溜めておけるか(抗回旋力)
- どれだけ地面を滑らずにつかめるか(足裏のグリップ力)
という2つの要素が非常に重要です。
大谷の場合、
- 下半身が先に回り始めても、上半身と腕がすぐにはついていかず、一瞬“タメ”を作れる抗回旋力
- スパイクと足裏全体で地面を“ねじりながら踏める”ため、地面反力のロスが少ない
という特徴があります。
最新のトレーニング理論でも、「パワーの約7〜8割は下半身と骨盤周りから生まれる」とされており、上半身の筋力だけでスイングや投球を速くしようとしても限界があると言われています。
大谷はまさに、
- 下半身でエネルギーを“溜める”
- 体幹で“我慢する”
- 最後にバットや腕で“解放する”
という理想的なエネルギー伝達を、極めて高い精度で実現している選手です。
投打双方に通じる“地面反力”の扱いとは?
スイングも投球も「踏み込み→圧縮→解放」の三段階が極めて効率的?
大谷翔平が投手としても打者としてもトップレベルに立てる最大の理由は、動きの原理がどちらも「地面反力」を中心に設計されているからです。
① 踏み込み(Load)
- 投球:
ランジのように前足へ体重を乗せる動きの中で、股関節・膝・足首を同時に“たわませる”。 - 打撃:
ステップ〜着地のタイミングで、前脚に体重を移しながら、骨盤をわずかに開きつつも上半身は我慢する。
→ この段階で、地面反力を生む“準備”が整います。
② 圧縮(Store)
- 前足で地面を踏みしめ、股関節を内旋させながらエネルギーを溜める時間を確保します。
- 体幹の抗回旋力により、下半身と上半身のねじれ差(Xファクター)が最大化します。
→ ここでバネを目一杯縮めた状態が作られます。
③ 解放(Release)
- 投球では、骨盤→胸郭→肩→肘→手首→ボールの順にエネルギーが伝達。
- 打撃では、骨盤→体幹→肩→腕→バットヘッドの順にエネルギーが伝わります。
→ 結果として、
投球では160km/h級のボール、打撃では120mphに迫る打球速度が生まれるのです。
重要なのは、「投手のフォーム」と「打者のスイング」がまったく別物ではなく、“地面反力をどう溜めて、どう解放するか”という同じ原理で統一されている点です。
この“共通プラットフォーム”を持っているからこそ、大谷は二刀流でありながら両方でMLBトップクラスのパフォーマンスを維持できていると考えられます。
力の逃げ場がないフォーム設計とは?
なぜ小さな体重移動で巨大なエネルギーが出せるのか?
多くのパワーヒッターや剛腕投手は、大きな体重移動や派手なモーションで力を生み出します。
一方、大谷のフォームは「大柄なのにコンパクト」「無駄が少ない」と評されることが多いです。
これは、フォーム設計そのものが“力の逃げ場を作らない構造”になっているからです。
- ステップ幅は大きいが、頭の位置は大きくブレない
- 骨盤の回転と同時に、体幹が適切な角度で前傾し、力がボールの方向へ一直線に向かう
- フォロースルーは大きくても、「振り終わり」まで軸足・踏み込み足が安定している
つまり、
「大きく動いているようで、エネルギーの向かう先は常にボール(またはホームプレート)方向に集約されている」
という状態です。
その結果、
- 打球は強く・遠くへ飛びやすくなる
- 投球ではコントロールと球威が両立しやすくなる
- 余計な横ブレやねじれが少ないため、ケガリスクの低減にもつながる
という、“パフォーマンスと耐久性を両立したフォーム設計”になっていると考えられます。
大谷翔平身体能力MLB史上規格外まとめ
大谷翔平の身体能力は、「筋肉がすごい」「体が大きい」といった単純な話ではなく、運動科学的に見ても極めて合理的な構造をしています。
- 下半身出力とスプリント能力がエリートレベル
- 体幹の剛性と抗回旋力により、回転軸のブレがほぼない
- 股関節の深い内旋と地面反力の活用で、110〜120mph級の打球と160km/h級のボールを生み出す
- 投打ともに「踏み込み→圧縮→解放」の三段階を極限まで効率化したフォーム設計
これらがすべて組み合わさることで、
「MLB史上でも例を見ないレベルのパワーとスピードを両立したアスリート=大谷翔平」という、唯一無二の存在が成立していると言えます。
私たちが日常で参考にできるポイントとしては、
- 下半身のトレーニングを優先して行う
- 体幹を「固める」のではなく「ブレない軸として機能させる」意識を持つ
- 動作を「地面→体幹→末端」へと順番に伝えるイメージで行う
といった点が挙げられます。
大谷翔平の身体能力はたしかに“規格外”ですが、その裏側にある運動原理や考え方は、私たちのトレーニングやビジネスにも応用可能なヒントの宝庫です。
※大谷翔平選手やドジャースの最新情報発信!ショウタイムズはコチラ
よくある質問 / Q&A
Q1. 大谷翔平のような打球速度(110mph超え)を一般人が目指すのは現実的ですか?
A1. 完全に同じレベルを目指すのは現実的ではありませんが、「下半身主導のスイング」「体幹の安定」「地面反力の活用」を意識することで、自分比での打球速度アップは十分に可能です。筋力だけでなく、フォームの効率を高めることが重要です。
Q2. 垂直跳びを伸ばせば、野球のパフォーマンスも上がりますか?
A2. 垂直跳びは地面反力の指標として有効で、ジャンプ力向上はスプリントや踏み込みの爆発力アップにつながりやすいです。ただし、野球では「ジャンプそのもの」よりも、「その力を横方向の動きや回転に変換できるフォーム」がセットで重要になります。
Q3. 体幹トレーニングは、どのような種類が大谷翔平のような動きに近づけますか?
A3. 単に腹筋を固める種目だけでなく、「ねじれに耐える」「片脚立ちでバランスを保つ」「下半身と上半身のタイミングをずらして動かす」ような種目が有効です。プランク系に加え、メディシンボールスローや片脚バランス系トレーニングを組み合わせると、抗回旋力アップに役立ちます。
Q4. 下半身と上半身のどちらを優先的に鍛えるべきですか?
A4. 大谷翔平の例からも分かる通り、パワーの源泉は下半身と骨盤周りです。まずはスクワット、ヒップスラスト、ランジなどで下半身の出力を高め、その上で体幹と上半身の連動性を高めていく流れがおすすめです。
Q5. 投打両方でパフォーマンスを上げたい場合、共通して意識すべきポイントは何ですか?
A5. 共通のキーワードは「地面反力」と「回転軸」です。投げるときも打つときも、足裏で地面をしっかり捉え、体幹の軸をブレさせずに回転させることが基本です。フォーム作りでは、投球と打撃をまったく別物として考えるのではなく、「同じ原理で動いている」という意識を持つと、身体能力を効率よく引き出しやすくなります。

