山本由伸はなぜ「筋トレをしない自己流投球フォーム」を貫き世界一の投手になれたのか?

ロサンゼルス・ドジャースで球団初のワールドシリーズ2連覇を達成し、自身もワールドシリーズMVPに輝いた山本由伸投手は、
「筋トレはしない」「フォーム変更にコーチ陣はノータッチ」
という、現代野球では異色ともいえる“自己流スタイル”を貫いている投手です。
NPB時代には2021〜2023年にかけて3年連続投手4冠、沢村賞、MVPを総なめにし、渡米後もメジャー2年目の2025年にはレギュラーシーズンで安定した成績を残しながら、ポストシーズンでは3勝&防御率1点台でワールドシリーズMVPを獲得しています。
こうした圧倒的な結果の裏側には、周囲の声に流されない“自己決定”と“自己検証”を軸にした独自メソッドがあるのです。
ここでは、
「筋トレをしない」「フォーム変更にコーチ陣はノータッチ」
というキーワードに焦点を当てながら、山本由伸投手の自己流メソッドの中身と、それがどのようにして世界一の投手につながったのかを解説していきます。
プロ1年目オフのフォーム大改造はどのようにして生まれたのか?
山本由伸投手の“常識破り”は、プロ1年目のオフから始まっていると言われています。
オリックス入団直後のオフ、自主トレ期間に大胆なフォーム改造へ踏み切ったことが、その後のキャリアを決定づける大きなターニングポイントになったからです。
当時、山本投手は右肘をほとんど曲げずに、そのまま後ろへ長くテイクバックする現在のフォームを身につけました。
このフォームは見た目のインパクトが強く、
「アーム投げではないか」「肘を痛めるのではないか」
といった不安や批判も少なくなかったと言われています。
それでも山本投手は、
「自分はこれが一番いいと思うので続けます」
と周囲に伝え、結果が十分でなかった2年目にも関わらず、自ら選んだフォームを押し通しました。
通常であれば、実績の乏しい若手が首脳陣の不安や世間の批判を押し切るのは大きなリスクですが、そこで“自己流”を貫いたことこそが、山本由伸という投手の芯の強さを象徴していると言えます。
フォーム改造はどんな狙いで行われたのか?
この大幅なフォーム改造には、単なる「変化」以上の明確な狙いがありました。
- 肘や肩への負担を分散し、全身で投げるフォームにすること
- リリースポイントを安定させ、ストレートと変化球の見え方を揃えること
- 将来の長期的なキャリアを見据え、怪我のリスクを減らすこと
結果として、以前は悩まされていた肘の張りが軽減されたとされ、フォームそのものが“ケガ予防”の役割も果たすようになっていきました。
フォームを変えた直後は不安もあったはずですが、自分で選び、自分で検証し、結果で証明していく――このプロセスこそが、山本投手の「自己流」の原型になっているのです。
山本由伸はなぜ「筋トレをしない自己流トレーニング」を選んだのか?
山本由伸投手といえば、「筋トレはしない」スタイルも大きな特徴です。
近年の野球界では、ウエイトトレーニングで筋肉を大きくし、パワーアップを図る選手が多数派ですが、山本投手はあえてその流れに乗らず、独自のトレーニング哲学を築き上げてきました。
「青竹をしならせるように投げる」とはどんなイメージなのか?
山本投手のトレーニングを支えるキーワードのひとつが、「青竹をしならせるような全身運動」です。
これは、体の一部の筋肉をピンポイントで鍛えるのではなく、全身をしなやかに連動させて投げることを重視する考え方です。
- 重い重量を扱う筋力トレーニングよりも、しなやかさや連動性を高める動きが中心
- 地面からの反力を使い、足→体幹→腕へとエネルギーを伝える“全身運動”を徹底
- 「力む」のではなく、「脱力した状態から一気にしならせる」感覚を追求
このアプローチにより、球速やキレを出しながらも、肘や肩だけに負担をかけないフォームに近づけているのです。
結果として、NPB時代の平均球速アップや、長いシーズンを通じた安定感につながったと考えられます。
「筋トレをしない自己流」はなぜ今の時代にマッチしているのか?
一見すると、時代の潮流に逆行しているようにも見える「筋トレをしない自己流」ですが、実は現代の投球理論とも噛み合っている面があります。
- 故障リスクを抑えながら高いパフォーマンスを出し続ける“サステナブルな投球”
- 過度な筋肥大よりも、“動きの質”と“再現性”を重視するモダンなピッチング哲学
- シーズンを通じてコンディションを整え、ポストシーズンで100%を出す考え方
ドジャースでも、山本投手の確立されたメソッドに対して「どう変えさせるか」ではなく、「どうサポートするか」というスタンスが取られていると見られており、球団と選手が“自己流を尊重し合う関係”を築いていることが、長期契約と連覇の土台になっていると言えるでしょう。
フォーム変更に「コーチ陣はノータッチ」だったのはなぜか?
オリックス時代、そしてメジャー挑戦を見据えたフォーム変更においても、山本由伸投手の周囲のコーチ陣は、基本的にノータッチだったとされています。
これは決して放任ではなく、
「本人の完成度の高いメソッドに対するリスペクト」
の表れとも言える対応でした。
2023年の「左足すり足フォーム」導入にはどんな意図があったのか?
オリックス最終年となった2023年、山本投手は左足を“すり足”のように前に運ぶフォームを取り入れました。
一見すると小さな変化に見えますが、そこには明確なMLB対策がありました。
- 日本の柔らかいマウンドでは、掘れた部分をひねりに変えて投げる投手も多い
- 一方で、メジャーのマウンドは固く、同じ感覚では投げにくい
- そこで“ひねり”に頼らず、前方への推進力と縦の動きを強めるフォームへシフト
つまり、NPBで絶好調だったにもかかわらず、あえて「ドジャースで勝つためのフォーム」へとアップデートをかけていたのです。
それほどまでに、山本投手は自分のキャリアを“未来から逆算”して設計していると言えます。
コーチが口を出さず「見守る」スタイルになった背景とは?
山本由伸投手に対して、球団のコーチ陣がフォームにノータッチだった背景には、次のような要因が考えられます。
- 本人の中でトレーニングとフォームの理論がすでに体系化されていた
- 一つひとつの動きに明確な意図があり、外部からの安易な修正が逆効果になり得る
- 調子の良し悪しも自分で分析し、修正プランまで自分で組み立てられるレベルだった
日本ハム時代にダルビッシュ有投手や大谷翔平選手と長時間ディスカッションしてきたトレーナーが、
「山本に関してはむしろ教えられることが多かった」
と語るほど、プロ入り後は立場が逆転していったと言われています。
これは、“自己流”という言葉から連想されがちな
「独りよがり」
とは真逆の、極めて論理的で再現性の高いメソッドを山本投手が持っていることの証拠だと言えます。
ドジャース連覇とワールドシリーズMVPは自己流メソッドの“答え”なのか?
山本由伸投手の自己流メソッドは、NPBでの3年連続投手4冠・沢村賞・MVPという結果はもちろん、メジャーでの実績によっても裏付けられています。
ドジャースと史上最高クラスの長期契約を結んだのち、2024年のワールドシリーズ制覇、そして2025年の連覇とワールドシリーズMVP獲得へとキャリアを伸ばしていきました。
メジャー2年目で「ポストシーズンの顔」になれた理由とは?
メジャー2年目のシーズンで、レギュラーシーズンでは安定した先発ローテーションの柱として働きつつ、ポストシーズンではギアを一段引き上げた投球を見せました。
特に2025年のワールドシリーズでは、先発で完投に迫るような内容を披露しながら、短い間隔で救援登板もこなし、3勝と防御率1点台という圧巻のパフォーマンスを残しています。
これはまさに、日頃から「全身で投げるフォーム」と「筋トレに頼らないしなやかな身体操作」を積み上げてきたからこそ実現できた“持久力と瞬発力の両立”だと言えます。
シーズン終盤や短期決戦で失速するのではなく、むしろギアを上げられる投手であるという点が、世界一のチームから厚い信頼を得ている理由です。
「自分で決めて、自分で責任を取る」姿勢が結果につながるのか?
山本由伸投手の自己流メソッドには、一貫して「自己決定」と「自己責任」の姿勢が貫かれています。
- フォーム改造も、メジャー仕様へのアップデートも、自らの意思で決断
- 周囲の不安や批判を理解したうえで、それでもやり切る覚悟を持つ
- 良い結果も悪い結果も、自分で検証して次の改善につなげる
だからこそ、ドジャースのような分析志向の強い球団においても、「山本由伸という投手のメソッドそのもの」を尊重し、最大限に生かす方針が取られていると考えられます。
自己流であることが目的ではなく、「勝つために最適な方法を自分で探し続ける」ことが目的になっているからです。
山本由伸の“自己流メンタル”はどのようにして育まれたのか?
技術面やトレーニング面だけでなく、山本由伸投手の“自己流”はメンタル面にも強く表れています。
高校の先輩であり、現在母校の監督を務める指導者は、プロ入り後も山本投手から“教えられることの方が多くなった”と語っています。
- どれだけ好成績を残しても「まだ伸ばせる」「もっと良い球が投げられる」と言い切る向上心
- 先発ローテーション投手として、登板間の過ごし方や次回登板へのアプローチまで細かく設計
- 自分の“極意”を隠すのではなく、高校の後輩にも一字一句伝えていくオープンな姿勢
こうした姿勢は、単にストイックというだけではなく、自分のメソッドを常に言語化し、再現可能な形にしていく作業の積み重ねでもあります。
その結果、山本投手自身が“実践と理論を兼ね備えたコーチ”のような存在へと進化していると言えるでしょう。
一方で、故郷・備前市の祖母に毎年誕生日の鉢植えを贈るなど、家族を大切にする穏やかな素顔も広く知られるようになりました。
大舞台での冷静沈着な投球と、プライベートでの温かさ。このギャップもまた、山本由伸という投手の大きな魅力のひとつです。
山本由伸筋トレはしない自己流フォームまとめ?
山本由伸投手が「筋トレはしない」「フォーム変更にコーチ陣はノータッチ」という自己流スタイルで世界一の投手になれた背景には、次のようなポイントがあります。
- プロ1年目のオフに大きなフォーム改造を行い、自分で選び、自分で責任を取る姿勢を貫いてきたこと
- 筋トレで筋肉を大きくするより、「青竹をしならせるように全身で投げる」トレーニング哲学を徹底していること
- NPBでの圧倒的な実績に満足せず、メジャーのマウンドを想定したフォームのアップデートを続けてきたこと
- コーチ陣が口を出せないほど、トレーニングとフォームの理論を自ら体系化し、実践と検証を繰り返してきたこと
- 技術面だけでなく、登板間の過ごし方やメンタル面まで含めて「自己流メソッド」として完成度を高めていること
結果として、ドジャースの一員として球団史上初のワールドシリーズ連覇を達成し、自身もワールドシリーズMVPを手にするまでに至りました。
山本由伸投手の“自己流”は、単なる独自性ではなく、「勝つために最適な方法を、自分で考え抜いて実行する生き方」の象徴だと言えます。
これから先も、山本投手は筋トレに偏らないしなやかな投球と、自ら進化を続ける自己流スタイルで、メジャーの舞台をさらに驚かせてくれるはずです。
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よくある質問 Q&A
Q1. 山本由伸投手が「筋トレをしない」と言われるのは本当ですか?
A. 一般的なウエイトトレーニングで筋肉を大きくすることより、全身のしなやかさや連動性を重視したトレーニングを行っているとされています。まったく筋力トレーニングをしないというより、「筋肥大中心のウエイトに依存しない自己流メソッド」と理解するとイメージしやすいです。
Q2. 自己流フォームはケガのリスクが高いのではないですか?
A. 見た目の独特さから「肘を痛めそう」といった声もありますが、山本投手はフォーム改造によって肘の張りが軽減されたと語っています。全身で投げるフォームにしたことで、局所への負担を減らす狙いもあり、理論に基づいた自己流と言えます。
Q3. ドジャースに移籍してもフォームやトレーニングは変わっていないのですか?
A. 基本的なコンセプトは変えずに、メジャーのマウンドやスケジュールに合わせて微調整を続けていると考えられます。オリックス最終年から既にMLBを見据えたフォーム変更を行っており、その延長線上で進化しているイメージです。
Q4. 山本由伸投手の自己流メソッドはアマチュア選手も真似してよいのでしょうか?
A. 考え方や姿勢から学ぶことは大いにおすすめできますが、フォームそのものをそのまま真似するのは危険な場合もあります。山本投手も、自身の体や感覚に合う形を長年かけて作り上げてきました。「自分の体に合った自己流を、自分で検証しながら作る」というスタンスを参考にするのが良いです。
Q5. 今後、山本由伸投手はどのような進化を遂げると思いますか?
A. これまでのキャリアを見ると、結果に満足せずに常にフォームやトレーニングをアップデートし続けています。メジャーでの経験値がさらに増えることで、対戦打者や球場条件に応じた“引き出し”が増え、より完成度の高い自己流メソッドへと進化していく可能性が高いです。

