2026年WBCに向けて、大谷翔平選手の出場表明が話題になる一方で、ファンが最も気にしているのが「山本由伸と佐々木朗希は本当に侍ジャパンとして投げられるのか?」という点です。
この問題の裏側には、単なる「選手の気持ち」や「愛国心」ではなく、MLBが持つ強力な権利構造と、60日IL(故障者リスト)に関する厳格なルールが存在します。
この記事では、
- MLBではなぜ「選手は球団の資産」とみなされるのか
- WBCなのに、なぜMLBと球団の承認がここまで強いのか
- 60日IL経験者である佐々木朗希に、なぜ“事実上の拒否権”が発動しうるのか
- 山本由伸と佐々木朗希、それぞれのWBC参加可能性はどの程度なのか
を、MLBの権利構造という視点からわかりやすく解説していきます。
MLBではなぜ「選手は球団の資産」と見なされるのか?
MLBとNPBの大きな違いのひとつが、「選手契約の捉え方」です。
MLBでは、選手との契約は次のような考え方に基づいています。
- 球団は選手のパフォーマンスに対して巨額の年俸を支払う
- 同時に、故障リスクや将来のパフォーマンス低下リスクもすべて球団が引き受ける
- そのため、選手の身体状態や登板・出場スケジュールを管理する権利も球団側が強く持つ
つまり、MLBでは
「選手は球団にとって、長期契約という形の“資産”であり投資対象」
という前提でルールが組み立てられています。
この前提から、次のような結論が導かれます。
- 球団には選手の健康を守る義務がある
- 球団は選手を“勝手に”国際大会に出場させる必要はない
- 怪我を抱えた、あるいは怪我リスクが高いと判断される選手のWBC参加には、球団の明確な承認が必須
ファン目線では「日本代表で投げてほしい」が自然な感情ですが、球団目線では「数百億円規模の資産をリスクにさらす判断」になるため、どうしても慎重にならざるを得ないのです。
なぜWBCはMLBの管理下にある大会と言えるのか?

WBCは国際大会ですが、その主催はMLBとMLB機構傘下のWBC Inc.です。
つまり、MLBは
- 「国際大会の主催者」でありながら
- 「その大会に出場する選手の所属球団」でもある
という、非常に特殊な立場にあります。
その結果として、
- MLB選手のWBC出場には「選手の意思」だけでなく
- 所属球団
- MLB機構
- 選手会(MLBPA)
すべての承認が絡む構造になっています。
特に投手に関しては、球団側の意向が非常に強く働きます。
球数制限・中4日問題・シーズン前の調整など、どれも投手の健康と直結するからです。
表向きは「選手の自主的な参加」に見えますが、実態としては
「MLBと各球団のリスクマネジメントの枠内で許可された選手が出場する大会」
と言い換えることもできます。
60日IL経験者に与えられる“事実上の拒否権”とは?
山本由伸・佐々木朗希のケースで特に重要なのが、「60日IL」の存在です。
MLBには、負傷した選手を登録外としながら年俸を支払い続ける「故障者リスト(IL)」があります。
その中でも60日ILは、
- 最低60日間はメジャーの試合に出られない
- その間、40人枠からも外れる
- 球団としても“最後の手段”として使う重いリスト
という性質を持っています。
WBCに関するルールでは、
- 直近シーズンで60日ILに入り、かつ一定期間以上シーズン終盤も離脱していた選手については
- 球団側がWBC出場を拒否することができる
という規定があります。
これは単なる「手続き上の承認」ではなく、実質的に球団へ強い拒否権を与えるものです。
投手の場合、
- 肩や肘の故障は将来の資産価値に直結
- 国際大会での再故障リスクは計り知れない
- しかもWBCはシーズン前で、年間ローテーションにも影響
といった事情が重なるため、球団は慎重になりやすくなります。
山本由伸のWBC参加可能性はどれくらい高いのか?
山本由伸投手の場合、2025年シーズンはフル稼働でワールドシリーズMVPまで獲得し、「健康」と「実績」を同時に証明した形になっています。
この点で、60日ILルールの“拒否権”の対象にはなっていません。
一方で、懸念材料もあります。
- MLB1年目からポストシーズンまで酷使レベルのイニングを投げた
- 2026年もドジャースの先発ローテーションの柱として計算されている
そのため、ドジャースとしては
- 完全な“フル回転”を望むのではなく
- 球数制限や登板間隔の調整など、「使用法」に条件を付けたい
というスタンスになると見られています。
つまり山本は、
- ルール上は球団が一方的にブロックするのは難しい
- しかし「登板のさせ方」については、MLB側・球団側から細かいリクエストが入る可能性が高い
というポジションにいます。
侍ジャパン側がその条件をどこまで受け入れるかが、最終的な合意の鍵になってきます。
佐々木朗希はなぜ“球団が最も慎重になるプロファイル”なのか?
佐々木朗希投手は、山本とはまったく逆の意味で注目されています。
- MLB1年目で右肩を痛め、長期の60日IL入り
- シーズン終盤はリリーフ起用が中心で、球団は無理な先発復帰をさせなかった
- 球速自体は戻ってきた一方で、「シーズン通してローテを守れる耐久力」は未知数
という状況です。
このプロファイルを踏まえると、ドジャースが慎重になるのは当然と言えます。
- これから先発ローテーションの軸として育てたい
- 肩の状態を長期的に見ながら、段階的にイニングを増やしたい
- その矢先に、シーズン前の国際大会で高強度の登板をさせるリスクは大きい
さらに、先述の通り佐々木は60日IL経験者であり、WBCルール上、球団側には“明確な拒否権”が発生し得ます。
現地報道でも、「ドジャースは佐々木のWBC参加をブロックする可能性がある」と繰り返し指摘されており、最終判断はギリギリまで見極めが続く構図になりそうです。
MLBの権利構造は「公益性」より「資産価値」を優先しているのか?
ここで改めて押さえておきたいのが、MLBにおける価値基準です。
- 山本由伸:12年規模の超大型契約
- 佐々木朗希:今後の契約総額は300〜400億円規模と予想されるポテンシャル
- 大谷翔平:10年700億円クラスに加え、グローバルビジネス価値は桁違い
これほどの「投資」が行われている以上、球団が最優先するのは
- 自クラブの勝利
- 自クラブのビジネス価値
- その源泉となる「選手の健康とコンディション」
という非常にシンプルなロジックです。
WBCは、野球の普及・国際化という意味では大きな公益性があります。
しかし、個々のMLB球団から見れば、
- リターン(自球団への直接的な利益)は限定的
- リスク(故障・シーズンへの影響)はかなり大きい
という“割に合わない構造”にもなっています。
このギャップこそが、「ファンは出てほしい」「球団は慎重」という温度差を生み出していると言えます。
ファンはどうポジティブにWBCを楽しめるのか?
とはいえ、悲観的になる必要はありません。
MLBの権利構造を理解したうえで見てみると、次のようなポジティブな見方もできます。
- 球団は“出場そのもの”ではなく、“出場のさせ方”を重視している
- 山本由伸は、条件付きであっても参加できる可能性が高い
- 佐々木朗希も、完全ブロックではなく「シーズンの準備と両立できるか」という観点で議論されている
ファンとしては、
- 「出るか出ないか」だけで一喜一憂するのではなく
- それぞれの選手が「長くベストな状態で活躍するための選択」を尊重しつつ
- 最終的に決まった形で、WBCとレギュラーシーズンの両方を楽しむ
というスタンスが現実的で、かつ前向きな楽しみ方と言えます。
山本由伸佐々木朗希WBC参加問題MLB権利構造まとめ
山本由伸・佐々木朗希のWBC参加問題を“MLBの権利構造”から整理すると、次のポイントに集約できます。
- MLBでは「選手=球団の巨大な投資・資産」という前提があり、球団には選手の健康を守る強い権利と義務がある
- WBCはMLBが主導する大会であり、出場には選手本人だけでなく、球団・MLB・選手会の承認が絡む
- 直近シーズンで60日ILに入った選手には、球団側に“事実上の拒否権”が与えられており、佐々木朗希はこの条件に該当する
- 山本由伸は健康面で問題なく、ルール上もブロックしづらいため、条件付き参加の可能性が高い
- 佐々木朗希については、肩の故障歴と60日ILルールにより、ドジャースが最も慎重になるプロファイルであり、最終判断はギリギリまで持ち越される可能性が高い
こうした構造を理解しておくと、ニュースや報道の一言一句の意味が一気にクリアになります。
「なぜこんなに慎重なのか?」「なぜファンの期待通りにならないのか?」というモヤモヤも、ビジネスとルールの観点から冷静に整理できるはずです。
最終的にどの選手が侍ジャパンのユニホームに袖を通すのか――。
MLBの権利構造を踏まえつつ、その決断を見守りながらWBC本番を楽しみに待ちたいところです。
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よくある質問 / Q&A
Q1:山本由伸は、ドジャースが反対してもWBCに出場できますか?
A1:山本投手は直近シーズンで60日IL入りしておらず、ルール上は球団が一方的にブロックする条件には当てはまりにくいと考えられます。ただし、球団側が登板回数や球数などに条件をつけて参加を認める可能性は十分にあります。
Q2:佐々木朗希は、2025年に完全復活すれば拒否権の対象外になりますか?
A2:WBCの出場可否は「直近シーズンのIL状況」で判断されます。すでに60日IL入りの条件を満たしている以上、たとえシーズン終盤に好投を続けたとしても、球団側の拒否権自体は残ると考えられます。
Q3:大谷翔平は投手としてWBCに登板する可能性はありますか?
A3:報道ベースでは「打者としての参加は確定的で、投手としては球団側が慎重に判断する」というスタンスが伝えられています。完全な二刀流でのフル稼働ではなく、打撃メイン+限定的な登板、あるいは投手登板なしという形も想定されています。
Q4:NPBの選手はMLBのように球団に出場を拒否されることはありますか?
A4:NPBも球団と選手の契約構造はありますが、MLBほど明確な60日ILルールや国際大会に対する拒否権構造はありません。そのため、NPB所属選手は「本人の意思+球団の協力」で出場が決まるケースが多く、MLB所属選手とは事情が大きく異なります。
Q5:ファンとしてこの問題をどう受け止めればいいですか?
A5:WBCへの期待と同時に、選手のキャリアや健康を守る球団の立場も存在します。どちらが“正しい”ではなく、両方の論理があると理解した上で、最終的な選手と球団の決断を尊重し、そのうえでWBCとMLBシーズンを長期的に楽しむ姿勢が現実的で前向きなスタンスだと言えます。

