打率が下がればOPSも連動して下がる──それが一般的な感覚です。
なぜなら、ヒットが減れば出塁も長打も同時に減りやすいからです。
しかし大谷翔平選手は、打率が一時的に落ちてもOPSが大きく崩れにくい推移を繰り返します。
この現象は「好調・不調」ではなく、打撃が“数字的に崩れにくい形”で組まれていることを示しています。
この記事では、OPSの中身を分解しながら「なぜ打率とOPSが分離するのか」を、打撃設計の視点で整理します。
OPSの正体を分解すると何が見えるのですか?

OPSは、出塁率(OBP)+長打率(SLG)の合算です。
つまりOPSは「塁に出る力」と「長打で進む力」をまとめた指標です。
ここで重要なのは、打率(AVG)はOPSそのものではないという点です。
打率はOBPやSLGに影響しますが、OPSは最終的に「出塁」と「長打」の合成なので、どちらかが保たれればOPSは大きく崩れません。
言い換えると、OPSが落ちにくい選手は、打率が揺れてもOBPまたはSLGで“支え”を持てる構造になっています。
なぜ大谷翔平は打率が下がっても出塁率が落ちにくいのですか?
結論から言うと、四球が“打率低下のダメージ”を吸収するからです。
打率が落ちる局面は、多くの場合「ヒットが出ない」「ボールが野手の正面に行く」など、外的要因も重なります。
そのときに出塁までヒット依存だと、OBPが一緒に沈み、OPSも崩れやすくなります。
一方で大谷選手は、シーズンを通して四球が積み上がりやすいタイプです。
実際に2025年は100四球到達が話題になり、出塁率も高水準で推移しました。
この「四球の下支え」があるため、打率が短期的に落ちてもOBPが急落しにくいのです。
ポイントは、四球が増えること自体ではありません。
“結果が出ない時ほど当てにいかない”という判断が、四球と出塁率を守るという設計になっていることが強みです。
なぜ大谷翔平は打率が下がっても長打率が崩れにくいのですか?

次にSLG(長打率)です。
多くの選手は、打率が落ちる局面で「単打も長打も一緒に減る」ため、SLGまで連動して下がります。
しかし大谷選手は、ヒットの内訳がそもそも“長打寄り”になりやすく、少ないヒットでもSLGが保たれやすい構造です。
さらに、ホームランは単打よりもSLGへの影響が大きいため、1本の一撃がSLGを押し上げます。
実際に直近のシーズンでも、打率が前年より下がってもOPSが高水準に残る成績が確認できます。
これは「ヒットが減っても、長打の価値がSLGを支える」状態が起きていることを意味します。
つまり大谷選手の打撃は、単打を増やして打率を整えるよりも、長打の価値で得点貢献を最大化する形に寄っています。
三振や凡打を許容するのはなぜですか?
ここが“分離設計”の核心です。
大谷選手は、三振やフルスイングの凡打を過度に恐れません。
それは「当てにいくスイング」に切り替えると、次の2つが起こりやすいからです。
- 四球が減る(=OBPが下がる)
- 長打が減る(=SLGが下がる)
つまり、打率を守るための調整が、OPSを壊す調整になりやすいのです。
だからこそ大谷選手は、多少の空振りや荒れを許容してでも、OBPとSLGを守る選択を続けます。
この割り切りができると、打率は日々のブレを受けやすくても、OPSは「出塁」と「一発」で戻せます。
結果として、OPSは大崩れしにくくなります。
「打率が落ちてもOPSが落ちにくい」は再現性が高いのですか?
再現性が高くなりやすい理由は、成果の性質にあります。
- ヒット:相手守備、打球方向、運の影響を受けやすい
- 四球:判断・選球の比重が高い
- 本塁打:強い打球と角度の“質”の比重が高い
大谷選手は、運に左右されやすい要素だけに依存せず、判断と強打で取れる成果(四球・長打)を厚くする設計をしています。
そのため、短期の打率変動があっても、出塁と長打のどちらか(あるいは両方)が残り、OPSが持ちこたえやすくなります。
大谷翔平打率が下がってもOPSが落ちにくい構造まとめ
打率が下がってもOPSが落ちにくい理由は、次の三層構造にあります。
- 四球でOBPを下支えする
- 長打(特に本塁打)でSLGを維持する
- 打率を守るために当てにいく調整より、OPSを守る選択を優先する
これは好不調の話ではなく、最初から「数字が崩れにくい形」で打撃が組まれているということです。
大谷翔平選手の強さは、派手な結果だけでなく、成績の“落ちにくさ”そのものにも表れています。
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よくある質問(Q&A)
Q1. 打率が低いのにOPSが高いのはなぜですか?
A. OPSは出塁率(OBP)と長打率(SLG)の合計なので、打率が低くても四球で出塁できたり、本塁打や二塁打が多かったりするとOPSは高くなります。打率だけで打撃の価値が決まらないのがポイントです。
Q2. 大谷翔平はなぜ四球が多いのですか?
A. 危険球を無理に打ちにいかず、甘い球を強く振る判断が安定しているためです。結果として、相手投手が勝負を避ける場面も増え、四球が出塁率の土台になります。
Q3. 三振が増えると普通は評価が下がりませんか?
A. 三振自体は減点要素に見えますが、当てにいくことで四球や長打が減ってしまうと、トータルの得点貢献(OPS)が下がりやすくなります。大谷翔平は、OPSを守るために「三振を過度に恐れない」設計を選べるのが強みです。
Q4. OPS重視の打撃は誰でも真似できますか?
A. 発想としては可能ですが、実行は簡単ではありません。打率が一時的に下がったときに“当てにいきたくなる心理”を超えて、選球と強打を保つ必要があります。だからこそ、OPSが崩れにくい打者は希少です。

